夕方、自宅寝室ベッドに寝転がっていると、幼稚園から帰ってきた娘の ´´しくしく泣く声´´ が別の部屋から聞こえてきた。
私は海に行くか、プールに行くか、マラソンするか、
レンタルしたブルーレイを見ないで返却日ギリギリに返しに行くか、
家が汚れている・片付けをしていないとイライラ怒りながら掃除をしている。
そんな日常を送っているため、子供との時間が少なく、悲しいかな 娘の泣き声への反応は薄い。
雄ライオンのような習性である。
放っておく事が多いのだが、この日の娘の鳴き声は「悲しみ」のみを含んでいるものと瞬時に察知。
ウトウトしていたが、心配になりすぐに娘を呼び寄せた。
事情を聞くと、鉄棒で前回りと逆上がりが自分は出来ないのであるが、
5月か6月には出来るようにしなければならないとの事。
幼稚園の方針であるとの事。
ベッドの上で亀のようにうつぶせた娘が泣きながら教えてくれた。
私の目玉の白い部分がなくなり、黒目のみとなる。
雄ライオンの魂に火が付く。
実はこの現象、今回だけではない。
昨年の夏だったろうか、同じ様に娘がしくしく泣いており、事情を聞くと ぐるりんこ が出来ないとの事。
ぐるりんこは正式名称ではないのかもしれないが、娘はそう呼んでいる。
大人と子供が向かい合って手を握り、子供が親の体を足で登りながらくるっと後ろ回りする事である。
娘が不憫になり、私が真剣に教えたところ、すぐにできるようになり、以後私はぐるりんこをできるようにしてくれた英雄となった。
よっぽど嬉しかったのか、半年間娘は父親の英雄っぷりを周囲にアナウンスする広告塔となった。
英雄から神に昇格するチャンスであると感じた私はすぐに鉄棒練習しに行くぞと告げた。
私も娘もやる気に満ち溢れていた。
父親としての立場の誇示。鉄棒ができるようになる。WIN-WINの関係である。
自宅から小学校が近く、すぐに向かった。
2人で歩いて行った。
娘の目は、まだ涙でキラキラしていたが、奥では希望を見ていた。